広島インドネシア協会  

活動実績

講演会・交流会「拡大するハラール市場 ~インドネシア ムスリム文化を知る~」

2017年2月8日

ホテルセンチュリー21広島において講演会・交流会を開催し、約180名の方々にご出席いただきました。

 

講演会では、株式会社 二宮 代表取締役社長 二宮 伸介様を講師に迎え、「拡大するハラール市場 ~インドネシア ムスリム文化を知る~」という演題でご講演をいただきました。その後の交流会でインドネシア留学生による舞踊や、帰国留学生への記念品贈呈が行われ、暖かい雰囲気に包まれた交流会となりました。

〈ご講演要旨〉

私は2002年からハラール食品専門で輸入製造卸を開始しました。当時はまだハラールといっても誰も知らないような状況でした。現在、イスラーム教徒の人口は約20億8千万人で、世界の3.5人に1人はイスラーム教徒です。1位はインドネシアで2億2千万人、中国でも約2千万人のイスラーム教徒が暮らしています。一方、日本ではたった18万人だけ。イスラーム教徒がこんなに少ない国はどこを探してもありません。日本はイスラーム教徒に対する知識に乏しい国ですが、現在AEAN諸国からの訪日客は増えてきており、ハラールの需要がますます高まっている状況にあります。

 

イスラーム教は約1400年前に、預言者ムハンマドがアッラー(神)からの啓示を受けて始まったもので、この啓示をまとめたものがクルアーン(コーラン)です。イスラーム教徒はクルアーンの中にある6信5行(6つの信仰箇条と5つの信仰行為)を必ず守らなければなりません。彼らは、1日5回のお祈りが義務付けられており、メッカにあるカアバ神殿の方角に向かってお祈りをします。また、イスラーム暦の9月1日から29日までの期間はラマダン(断食月)であり、日の出から日没まで一切飲食やタバコ等を我慢しなければなりません。日没後に家族そろって食事をするのが一般的です。

 

断食明けのお祝いは、日本のお正月と全く一緒で、家族や親戚が集まって料理を一緒に食べます。ちまきの他、豪華な料理が並びます。ホテルやレストランの方は、ぜひイスラーム暦の10月1日には断食明けのお祝いカードをレストランの入り口に貼っていただくと、ムスリムには非常に喜ばれます。可能なら、ハラールで断食明けお祝いに対応するメニューがあれば多くの利用があると思います。

 

■ハラールについて

ハラールとは、合法的なこと、つまりアッラーが禁止したものではないということです。逆に、非合法なものはハラーム(豚肉とその副産物、肉食動物、爬虫類と昆虫類、イスラーム法に従って屠殺されていないお肉など)です。豚と言っても、豚に由来するものは食品の他、薬や化粧品など様々なところに使われていますので気を付けなければなりません。

 

ハラールの認証機関は世界中で様々ありますが、日本では昔から宗教法人日本ムスリム協会が認証を行っています。現在、日本ではいろんな認証団体が出てきており、そのことが問題にもなっています。宗教法人日本ムスリム協会は世界ハラール協議会における唯一の日本のメンバーですから、この協会の認証であれば、海外のどこでもハラール製品として受け入れられます。ハラール認証を取得するにはとても大変で、例えば、ハラールのお肉(メッカに動物の頭と体を向けてコーランを唱えながら第三頸椎あたりにナイフを入れ屠殺されたもの)であっても、卸店でハラール専用機材以外でカッター、ミンチされたものはハラール性がなくなります。また、砂糖は製造する際、脱色時に骨炭塔が使われますが、それはだいたい牛の骨です。ですが日本ではハラール牛の骨炭塔はありません。従って、そういった砂糖は使えません。また、運搬の際に、豚肉と一緒にハラールのものを運ぶのもダメです。このように、ハラール認証を取得するためには、ありとあらゆるハードルを越えていかなければならないのです。

 

通常のホテルやレストランでは、なるべく材料がハラールのものを使うと安心です。加工していない野菜や魚介類はすべてハラールですから、何を使っても構いません。包丁やまな板はハラール専用のものを用意していただいた方がよいですが、冷蔵庫・冷凍庫に関しては、専用のものが持てなければ、冷凍庫の下の部分だけハラールを入れる等場所を決めていただくなど、各キッチンでガイドラインを作ることが大切です。店頭には「調理器具包丁フライパンはハラール専用に分けています」「ハラールミートを使っています」「砂糖、油、小麦粉など一部ハラール製品以外を使っています」など、正直に表示することが大事です。

 

日本ハラール協会(日本ムスリム協会の他に信用できる組織)では、ハラール調理師認定講習を実施しています。認定資格を取得すれば、店舗にハラール調理師在籍レストラン・ホテルと表示することができます。ムスリムの方はムスリムの調理人が作った料理は安心して食べますので、ホテルやレストランの方には非常に役に立つのではないでしょうか。

 

現在、ハラール食材に関しては、和洋中の食材がほぼ揃ってきましたので様々な料理をハラール食材で作ることができるようになりました。ただ、メニュー作りの際に外してはいけないのはエスニック料理です。インドネシア料理の代表的なナシゴレンやミーゴレンもいいのですが、ぜひアヤムゴレンやオポールアヤムなど、バラエティに富んだメニューもご用意ください。

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