広島インドネシア協会  

活動実績

講演会・交流会

2019年2月1日

ホテルセンチュリー21広島にて、講演会・交流会を開催し、約200名の方々にご出席いただきました。講演会は「注目されるムスリム・インバウンド~インドネシアから日本へ~」をテーマに、慶応義塾大学総合政策学部の野中 葉 様に、ご講演いただきました。交流会では、留学生による楽曲や舞踊の披露、帰国留学生への記念品贈呈が行われ、賑やかで温かい雰囲気となりました。

「注目されるムスリム・インバウンド ~インドネシアから日本へ~」

【講師】慶應義塾大学総合政策学部 専任講師 野中 葉 氏

インドネシア共和国は、人口約2.6億人のうち約90%がイスラーム教徒という世界最大のイスラーム教徒の人口を抱える国です。「多様性の中の統一」を国是とし、様々な宗教や民族が共存しています。「ムスリム」とは、言葉上の意味は「神に帰依する人」であり、イスラーム教徒のことを指します。また、ムスリムが神からのメッセージと信じ、生活上の指針にしているのが聖典クルアーン(またはコーラン)です。インドネシアのムスリムは比較的寛容で穏健だといわれ、民主化以降、近年のグローバル化や近代化とともに、特に若者を中心として、より真面目にイスラームを実践する人が増えていますが、教えに厳格な人も緩やかな人もおり、多様です。

 

近年、日本を訪れる外国人は年々増加し、2018年12月には、初めて3,000万人を超えました。インドネシア人の旅行形態は、家族や友人との団体旅行を個人で手配することが多く、日本のホテルシステムとなかなか合わないため、民泊を選択する人が増えています。リピーターも多く、ラマダン(断食)明け(2018年は6月)や桜開花時期が訪日インドネシア人数のピークですが、今後はインスタ映えする紅葉シーズンも増えると予測しています。

 

インドネシア人が訪日に期待することや体験したことは、日本食を楽しむこと、ショッピング、観光などが上位に挙がっています。「あると便利な情報」、すなわち「なくて困った情報」は、交通手段や飲食店関係です。日本食は食べてみたいが、日本語のハードルは非常に高いため、飲食店では「何を食べていいかわからない」「何を食べさせられるかわからない」と感じ、コンビニで白ご飯だけを買ったり、母国から持参したものを食べる人もいます。メニューには、英語表記や写真などがあるとよいでしょう。また、厳格なムスリムもいる一方で、クルアーンでは「やむえず」、また「違反の意思なく」食べたものは許されるとされるため、「何が入っているか知らせないでほしい」という方もいます。受け入れ側としては、人それぞれのニーズに応じて情報を選ぶことができる、という情報提供のおもてなしが、最も簡単で最も求められていることかと思います。

 

また、ムスリムの1日5回の礼拝への対応として、礼拝専用スペースを用意することは難しいと思いますが、畳1畳分ほどの清潔な場所と、礼拝前に清めるための洗面所があれば大丈夫です。私のインドネシアの友人は、ショッピング中に礼拝場所を見つけることができず、デパートの階段の踊り場で礼拝したそうです。本人は大ごとだと思わなかったようですが、周囲の日本人はびっくりしたかと思います。このように、インドネシア人本人が食事を選ぶことができる、礼拝場所を探している方に相応の場所を紹介できるということが、ムスリムおもてなしのヒントであり、「ムスリム・フレンドリー」だと考えます。

 

次に、近年のインドネシアの若者の特徴を3点ご紹介します。一点目は、「SNS大好き」です。フェイスブックやツイッター、インスタグラムなどの利用者数は世界第3位など、SNSを楽しむ人が多く、日本を旅行した体験が、次々にアップされています。二点目は、ポップなイスラームを受容していることです。ハラール化粧品の人気、ヒジャブ(ムスリムの女性が頭に着けるヴェール)コンテストの開催、テレビドラマで敬虔なムスリムがヒーロー・ヒロインになるなど、特に若者を中心としてイスラーム化が進んでいます。三点目は、「日本大好き」です。インドネシアはもともと親日的ですが、最近は日本語学習ブームが起きており、今や日本語学習者数の多さでは世界第2位、約74万人にものぼります。その約90%が高校生で、学校の選択外国語に日本語がありますし、日本のポップカルチャー、コスプレ、JKT48(ジャカルタを中心に活動するインドネシアの女性アイドルグループ。日本国外で最初に結成されたAKB48の姉妹グループ)、日本発のレストランも大人気です。

 

今後、広島を訪問するインドネシア人もさらに増えるでしょう。本日ご紹介した‘おもてなしのヒント’を活かしていただき、インドネシアと広島との友好・交流のさらなる発展につながれば幸いです。

 

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